一撃に入魂。
葵剣友会剣道交流大会レポート
小学生を対象とした葵剣友会交流剣道大会が11月4日(土)、岡崎農協体育館で行われた。三河地方を中心に全16チームがエントリー。他教室との交流を目的としているため、この日が初めての試合だという選手や、戦いながら相手の動きを学びたいという選手など、さまざまだった。中でも、県内外で活躍する選手が多く在籍しているという、高学年の試合に密着。激闘の決勝戦、2分30秒を振り返る。
葵城北、形埜など名だたる剣道教室との熱戦を制し、決勝へと駒を進めたのは、砥鹿神社剣道教室(豊川)の剣士ら。スピードとスタミナに定評がある選手が多い。大将の芦澤風雅君(小学5年)君は、小柄な体格ながら、しなやかな動きが持ち味だ。迎え撃つのは、安城東部で活動する祥学館剣道教室。低・高学年ともに着実に力をつけてきた勢いのあるチームで、各都市で開かれる大会の上位にも、その名は常連。特に、大将を務める水野音旺君(小学6年)は、高い身長を活かした剣さばきと、観察眼に優れている。試合前の水野君に心境を聞くと、「不安な気持ちもあるが、課題を克服できる内容にしたい」。芦澤君は、すでに面を付け終え、試合に向けて気持ちを作っているように見えた。
午後3時40分。いよいよ両者が直接ぶつかるときが来た。彼らを取り囲む観客の多さは尋常ではない。方々から、どちらにともなく応援の声がかかる。
そして試合開始。まずは様子をうかがう二人。先に仕掛けたのは芦澤君だった。力強い一撃に、水野君も応戦。ひらりとかわし、高い位置から大きく、素早く面を打ち込みに行く。積極的に相手のふところに飛び込んでいく瞬発力は、芦澤君がやや上か。互いに集中力を切らさず、一進一退の試合展開だったが、勝利を収めたのは砥鹿神社の芦澤君だった。
試合直後の声を聞きたく、駆け寄る。面を取った両者は―――泣いていた。
「とにかく悔しい。苦しい戦いだった」と話すのは水野君。勝者である芦澤君も、重い口を開いて「思い通りの試合運びができなかった」と言葉少なだった。
“勝てばいい”のではない。彼らにとっては“どんな試合をしたか”が重要なのだ。
長く短い2分30秒。その間、剣士たちは自分自身と対峙しているのかもしれない。
(文・光田さやか)