環境が、より私たちを強くする。

トリプルA

2月某日。寒風吹きすさぶグラウンドには、時折砂煙が立ち込めている。そんな状況をものともせず威勢のいい声を響かせるのは、安城市内を中心に活動するソフトボールチーム「トリプルA」の選手ら。
中学三年生の双子姉妹、井上夏希(姉)・実咲(妹)は、この春、全国屈指の強豪校である、鳥取県の鳥取城北高校へ進学、入寮する。

「実は、中二までは普通にこっちの公立高校に進学しようと思っていました」。苦笑いを浮かべながら口を開いたのは、妹の実咲。三年生になって、いよいよ進路を…と悩み始めたとき、監督が彼女たちにこう話したという。「いっそソフトボールが強い環境に、身を置いてみたらどうか」と。
そうして数ある候補の中から選んだのが、鳥取城北高校だった。「愛知県内の強豪私立高校は、自宅から通うのが遠い。だったらいっそ、鳥取で寮生活でもいいかもしれないと思ったんです」と、実咲は当時を振り返る。姉の夏希も同意。「チームの先輩が行っているところだったし、親や監督たちも賛成してくれたから、それが後押しになった」。
うちらの親、なんだかんだで口出しはしても、私たちが決めたことに反対はしないんだよね。最後にそう付け加えて、二人は顔を見合わせて笑った。

結成7年目という若い同チームながら、彼女たちのように県外の強豪校へ進路を取る選手は珍しくない。そのような環境で実力をつけてきたからこそ、おそらくこの決断もすんなりと彼女たちの胸の内に馴染んだのだ。

春からは、「とにかく自分の力を試す」という夏希。「練習中や試合など、しっかり声を出してアピールしていきたい」と、チームメイトの中でも埋もれないようにする努力をしたいと話してくれた。一方妹の実咲は、「先輩たちからいいところを学びたい」と、自分のプレイだけでなく周囲にも目を向けることを目標に。「普段から失敗した理由を考えて、それを次にいかせるようにしたい」。自身を俯瞰で見ることで己を成長させていくようだ。

考え方や性格が、似ているようで、どこか違う。妹・右打ち、姉・左打ち。好きな色、妹・青、姉・黄色。妹・返球がいつも高め、姉・ショーバン気味…。けれど二人は声をそろえる。
「でもうちら、人前に出るのは苦手なほうだよねえ…」。
なんて魅力的な二人だと思った。

鳥取での新生活は、そんな彼女たちをどう成長させてくれるのだろうか。素朴さ、素直さ、輝きを失うことなく、四つの瞳は明日を見据える。 (文:光田さやか)

トリプルA web サポーター




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